さくらんぼ:第1話

 僕は彼女イナイ歴19年。
 大学と家を往復する毎日だ。
 休みの日?
 趣味の漫画やアニメ、ゲームかな。
 ネットもするよ。
 エッチなサイトも好きだし、女の子のアソコがどういう形だかも知ってる。
 でも最近なんだかむなしくて。
 本物の女の子とデートしてみたいんだ。
 出会い系サイト? そんな勇気は僕にはないよ。
 けど、女の子とお話しだけでもしてみたい。

 ◇◆◇

「こういうところ初めて?」
「は……はい」
「どんなプレイがお好み?」
「プレイ?」
「入り口にメニュー表があったでしょ。見てきたよね?」

 僕は何を思ったか、イメクラってところに来ている。
 個室にナース姿の女の子と2人きり。
「い、いや、気がつきませんでした」
「本番以外は一応OKだからさ。60分なんてあっという間に過ぎちゃうよ。早く決めてよね!」
 女の子のあまりにもきつい口調に、僕は泣いてしまった。
「うっ、うっ」
「ちょっとぉ、やだ、泣いてるの?」
「僕、帰ります!」

 僕は個室を飛び出した。
 フロントでマネジャーのネームプレートをつけた男の人が僕の泣き顔に気がついた。
「お客様、どうしましたか」
「何でもないです。時間まだ来てないけど、お金払って帰ります」
「うちの女の子が何か失礼なことでもしたんでしょうか?」
「いえ、そういうわけじゃ。僕が慣れていないからです」
「風俗は初めてですか?」
「はい」
 マネジャーさんは数秒考えて、口を開いた。
「お客様、当店にお勧めの女の子がいます。気が優しくて、きっとお気に召すでしょう」
「え?」
「あと10分で前のお客さんが終わりますから、少し待っていただけますか?」
「は、はぁ」

 僕はフロントのソファで待った。
 やだなぁ。誰か知ってる人が来たらやばいよ。
 ずっと下を向いていた。
 10分きっかりたった頃、会社員風の男が会計を済ませて出ていく。
 少したって、マネジャーさんが僕のところに歩いてきた。
「お客様、お待たせしました。3番のお部屋へどうぞ」
「は、はいっ」
「どうぞごゆっくり」

 さっきの女の子みたいだったらどうしよう。
 僕は緊張しながらドアを開ける。
 半分くらい開けたとき、中から声がした。
「いらっしゃいませ」
 恐る恐る足を前へ出す。
「えぇぇぇぇぇぇ!」
 今まで見た中で一番可愛い女の子がとびきりの笑顔で部屋の真ん中に正座している。
 しかも偶然に僕の大好きなアニメキャラのコスプレ!
 すげえ! 超理想のタイプじゃん!
「こういうお店は初めてなの?」
「は、はい」
「じゃ、プレイはそんなにハードじゃないほうがいいよね」
「あの……あの……」
 僕は『プレイ』って言葉を聞いたとたんに固まってしまった。
「ぷ、ぷ、ぷ、プレイ……」
「キッス、フェラ。フィニッシュは手コキがいいかしら」
 どうしよう。どうしよう。
 心臓が恥ずかしいくらいにバクバク言ってる。
 こんなんじゃ、彼女がちょっと触れただけでも出ちゃいそう。
 でも、それじゃ男のメンツが……。

「あのぅ、お願いがあるんですが」
「なぁに?」
「話をするだけでもいいですか?」
 彼女はきょとんとした顔で僕を見た。
 あっ、キレイな顔をそんなに近づけないで。
 クラクラしちゃう。
「いいわよ!」

 彼女は優しかった。
 1時間たっぷり話し相手になってくれた。
 聞き役に回ってくれたり、世間話をしてくれたり。
 相槌のタイミングがまたいいんだなぁ。
 名前はサトミっていうんだって。

 ◇◆◇

「そろそろ時間ね」
「僕、帰りますね。きょうはありがとう」
「───ねぇ、時間延長しない?」
「は?」
「あたし、あなたに好感持っちゃったみたい」
 ひぃーーーーーっ!
 こ、こ、こ、好感?
 頭から大噴火しそうです。
「あと1時間半、いいよね?」
「ええ、まあ」
 彼女はフロントに電話をかけて、時間延長してくれた。

「失礼かもしれないけど、聞いてもいい?」
「はい」
「女性経験まだないよね?」
「……え、いや、その……」
「見てればわかるわよ」
「……」
「でも恥ずかしがることないのよ。誰でも初めてのときってあるんだし」
「初めてのとき?」
「きょうここで童貞捨てちゃわない?」
「ええーーーーー!」
 僕は思わず大声を上げてしまった。
「しーっ、しーっ。他の部屋に聞こえちゃう」
「ご、ごめんなさい。あんまりびっくりしたもんで」
「早くたって気にしないから。ね?」

 もしかして、これってすごくラッキー?
 宝くじにでも当たったような気分。
 彼女はめっちゃ可愛くて優しい。。
 こんな子と初体験できるなら……。
 よし、決めた!
「お願いします」
「うんうん。ただし誰にも内緒よ」


第2話に続く

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